競売物件とは?購入方法や融資を受ける際の注意点について解説

競売物件とは、金融機関などの債権者が裁判所に申し立てを行い、強制的に売り出された不動産のことです。
競売物件は、一般市場の不動産より比較的安い価格で購入しやすい傾向にあります。また、通常の物件と比較して手続きの負担が少ないのもメリットです。
ただし、債務者の不動産が裁判所の権限によって強制的に売却されているため、リスクや注意点が存在します。
この記事では、競売物件のメリットや購入方法、融資を受ける際の注意点などを解説します。
競売物件とは?
競売物件とは、債務者が住宅ローンなどの返済ができなくなり、担保に設定されている不動産が裁判所の権限によって強制的に売却された物件のことです。
住宅ローンなどの担保不動産には抵当権が設定されているため、債務不履行になった際に金融機関などの債権者が裁判所に申し立てることで強制的に売却できます。不動産を売却した代金は債務の返済に充てられます。
競売物件は一般市場とは異なり、入札方式で売却されるのが特徴です。なお、競売物件には戸建て・アパート・マンションなどのほか、事務所やオフィスビルといった事業用の不動産も含まれます。
競売物件と公売物件の主な違い
公売物件は、所得税や相続税など、税金の滞納によって差し押さえられた不動産のことです。競売物件と公売物件の違いは主に2つあります。
1つ目は債権者です。競売物件は債権者が個人や民間企業などであることに対して、公売物件の債権者は税金を扱う国税局や自治体などになります。競売物件は債権者の申し立てによって不動産を競売にかけられますが、公売物件は国税徴収法に基づいて国税庁が不動産を売却します。
2つ目は、競売物件と公売物件で不動産の管轄が異なる点です。競売物件は裁判所の権限で売却されるため、購入する際に裁判所へ赴く必要があります。いっぽうで公売物件は国や自治体が管轄なので、不動産を買うときに国税局などへ足を運ばなければなりません。
競売物件のメリット3選

競売物件の主なメリットは、以下の3つです。
- 比較的安く購入できる
- 物件の種類が多い
- 手続きの負担が少ない
それぞれを詳しく解説します。
比較的安く購入できる
競売物件は、物件を比較的安く購入しやすいことがメリットです。占有者や残置物などがあるケースも考えられるため、落札価格が相場よりも低くなる傾向にあります。
また内見ができないほか、引き渡し義務もないため、一般的な不動産にはないリスクがあることも安く購入しやすい理由のひとつです。
競売物件は、相場よりも4〜5割ほど安く買えるといわれています。ただし、物件によっても大きく異なるため注意が必要です。
物件の種類が多い
競売物件では、一般の不動産市場で流通しにくい物件も競売にかかる場合があります。たとえば、流通量の少ない事務所兼住宅や農地などが競売情報に掲載されるケースもあります。
そのほか、戸建て・マンション・店舗・ビルなど幅広い物件が存在するのも特徴です。また、通常の市場には出ない人気物件などが見つかることもあります。
手続きの負担が少ない
通常の物件よりも比較的手続きの負担が少ないことも競売物件のメリットです。不動産を購入する際、所有権の移転登記など、複雑な手続きが必要になります。
しかし、競売物件は裁判所が手続きを実施するため、書類の記入や代金の支払いなどを済ませるだけで購入できます。専門知識のある司法書士に依頼する手間を省けるほか、代行費用を抑えられます。
競売物件のリスクや注意点
競売物件を購入するにあたって、以下のようなリスクや注意すべきポイントも存在します。特に物件の引き渡し義務がない点はしっかりと押さえておきましょう。
- 競売物件は内見ができない
- 物件に不備があっても売主に責任を追求できない
- 物件の引き渡しが保証されない
- 期限が定められている
それぞれを詳しく解説します。
競売物件は内見ができない
競売物件を購入する際に、内見できない点は注意が必要です。そのため、物件の情報を得るには、物件明細書・現況調査報告書・評価書の3つを参考にします。
物件明細書は、物件に関する権利が記載された書類です。現況調査報告書には、物件の種類や構造、占有者の有無などがまとめられています。
また、評価書は物件周囲の環境や評価額が記された書類のことです。より詳しく物件の情報を知りたい場合は、実際に足を運んで現地を確認することがおすすめです。
物件に不備があっても売主に責任を追求できない
競売物件は通常の不動産と異なり、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を追求できません。契約不適合責任とは、不動産売買で売主が買主に対して負うべき責任のことです。
たとえば、通常は買主に引き渡した不動産が契約内容と異なっていた場合、売主は責任を問われます。しかし、競売物件は売主がいないため、契約不適合責任を追求することができません。
そのため、購入した競売物件に破損などが見つかっても自費で修理する必要があります。
物件の引き渡しが保証されない
競売物件には売主がいないため、引き渡し義務が生じないのも注意点が必要です。裁判所の権限によって差し押さえられた不動産に占有者がいる場合は、物件の購入者自身が法的手続きを行う必要があります。
裁判所から引き渡し命令が下されても占有者が退去に応じないときは、強制執行の申し立てを申請します。さらに、物件の明け渡し時に発生する費用は購入者が支払わなければなりません。
また、物件を購入したとしても占有者の家財などを許可なく処分できない点も注意しましょう。
期限が定められている
競売物件を購入する際は、裁判所が定めている期間内に入札書を提出する必要があります。裁判所が決めた提出期限は「期間入札」と呼ばれており、最も高額な入札者が物件を買う権利を得られます。
入札には、保証金として売却基準価額20%以上を入金する必要があるほか、入札後の取り消しはできないので注意しましょう。購入を検討している競売物件の情報収集を適切に行ったうえで、慎重に手続きを進めることが大切です。
競売物件の購入方法

裁判所に公示される競売物件は、BIT(不動産競売情報サイト)などで調べられます。競売物件の情報をリサーチするのに役立つ、物件明細書・現況調査報告書・評価書の3点も手軽に入手できます。
BITなどを活用して購入する競売物件を選定し、入札開始日を確認します。入札期間を迎えたら、入札書などの必要書類を提出します。入札期間後に届いた書類は無効になるので注意しましょう。
物件を落札して裁判所から許可が下りれば、代金納付期限が指定されます。期限は売却許可決定から約1ヶ月以内が目安です。定められた納付期限までに代金を納付すれば、競売物件の購入完了です。
競売物件でも融資は可能?
競売物件でも融資を受けることは可能です。ただし、利用する金融機関によって融資を受ける難易度が異なるほか、代金納付期限が定められているため、事前にしっかりと準備しておくことが重要です。
以下で、融資を受けるまでの流れや注意点を解説します。
競売物件で融資を受けるまでの流れ
競売物件の公示日から代金納付期限まで約3ヶ月と短いため、融資を受ける際には効率よく進める必要があります。大まかな流れとしては、1ヶ月目に金融機関を探し、2ヶ月目に融資の審査を受け、3ヶ月目には融資の実行を迎えます。
1ヶ月目は、競売物件の選定と入札準備を並行しながら、金融機関への相談を開始しましょう。物件の落札が不確定な段階で相談に応じてくれる金融機関を見つける必要があるため、複数の選択肢を用意しておくこと大切です。また、金融機関への相談と併せて購入予定の物件が融資の対象になるかも確認しておきましょう。
2ヶ月目は、入札期間内に手続きを行い、落札が明確になったタイミングで融資の準備を進めます。金融機関に相談し、可能であれば仮審査を受けておくとよいでしょう。裁判所から売却許可決定を証明する書類が届いたら、正式な融資の審査を開始します。
3ヶ月目は、融資の実行日を迎えられるように手続きを進めます。利用する金融機関によって異なりますが、融資実行まで3〜4週間ほどかかるのが一般的です。また、競売物件で融資を受けるには、民事執行法82条2項の申出書を提出する必要があります。
裁判所への必要書類の提出を済ませたら、金融機関から融資を受ければ準備完了です。代金を納付すれば、不動産は買受人の所有となります。
競売物件で融資を受ける際の注意点
競売物件で融資を受ける際、注意点がいくつかあります。
1つ目は、代金納付期日が裁判所によって定められていることです。決められた期日までに納付できない場合は、競売物件を購入する権利を失うリスクがあります。代金を期間内に全額納付できるよう、入札する段階で金融機関に相談しておきましょう。
2つ目は、融資特約(ローン特約)がない点です。融資特約とは、審査に落ちてしまった場合に売買契約を白紙撤回できる特約のことです。
融資特約があれば、事前に支払った手付金などが返還されるほか、違約金や損害賠償金などを請求されるリスクを回避できます。しかし、競売物件には融資特約がないため、裁判所によって定められた期日までに必要な代金を納付しないと保証金が返還されないので注意が必要です。
3つ目は、競売物件に入札するために、売却基準価額の20%以上を納付する必要があることです。入札時に保証金を融資で用意するのは困難なため、融資とは異なる方法で資金を確保しなければなりません。
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競売物件の特徴を把握したうえで、融資の相談をしよう
競売物件を購入する際に、金融機関から融資を受けることは可能です。市場価格よりも安く購入しやすいため、融資額を低く抑えられる可能性があります。
ただし、裁判所によって代金納付期日が定められているので、事前の準備をしっかりと行ったうえで融資に必要な手続きを進めることが大切です。
なお、金融機関によっては融資を受けられないケースもあるため、複数の金融機関に相談することも検討しましょう。
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- 監修者
- 竹下 昌成(たけした あきなり)
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- プロフィール
- 大家業、TAC講師、竹下FP事務所代表。1971年生まれ。兵庫県西宮市在住。立教大学卒業後、地銀やノンバンク、住宅メーカーFPを経て現職。30歳から大家業をスタート、45歳でFIRE。年間家賃収入3,600万円。得意分野は住宅購入と不動産投資。
- 資格情報
- CFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、住宅ローンアドバイザーほか
- https://mbp-japan.com/hyogo/fp-takeshita/