ファクタリングと手形割引の違いとは?メリット・デメリット、選び方も紹介

ファクタリングと手形割引は、どちらも資金調達手段のひとつです。いずれも資金繰りの安定化を実現できる点は共通していますが、適用される法律や現金化の対象など、異なる点も少なくありません。
本記事では、ファクタリングと手形割引の違いや利用するメリット・デメリットを解説します。また、手形割引などに利用される約束手形が廃止される動きについても紹介します。
ファクタリングは「売掛金」を現金化するサービス
ファクタリングは、個人事業主や企業が保有する売掛金(売掛債権)を期日前に売却して現金化するサービスです。
一般的に、企業間の取引では、商品やサービスの対価を後日受取る掛取引が多いです。しかしファクタリングを利用すれば、期日前に売掛債権を現金化できるため、資金の調達手段のひとつとして活用されています。
ファクタリングにはいくつか種類がありますが、一般的には買取型ファクタリングをさすことが多いです。
なお、買取型ファクタリングには2社間契約と3社間契約があるので、覚えておきましょう。
- 2社間:利用者とファクタリング会社の契約
- 3社間:利用者、取引先(売掛先)、ファクタリング会社の契約
手形割引は振り出された「約束手形」を早期に現金化するサービス
手形割引は、振り出された約束手形を期日が到来する前に現金化する方法です。約束手形とは、一定の期日に金額の支払いを約束した有価証券のことで、性質は掛取引と似ています。
本来、約束手形は期日を迎えなければ現金化はできませんが、手形割引を利用することで期日前の現金化が可能になるため、ファクタリングと同様に資金調達の方法として利用されることが多いです。
ファクタリングと手形割引の7つの違い
ファクタリングと手形割引は似た性質があるものの、違う点も多数あります。以下でファクタリングと手形割引の主な違いを7つ紹介します。
①現金化できる対象の違い
ファクタリングは売掛債権が現金化の対象ですが、手形割引は約束手形が現金化の対象です。ファクタリングと手形割引は、どちらも流動的に資金を調達できる方法になりますが、現金化の対象が異なることを覚えておきましょう。
②利用時の審査基準の違い
ファクタリングと手形割引は、申込みの時点で審査が実施されます。どちらも、利用先によって審査基準は異なりますが、一般的にファクタリングは、手形割引に比べて審査基準が低い傾向があるので覚えておきましょう。
ファクタリングは売掛債権の売買になるため、売掛先を重視した審査となるケースが多く、利用者が赤字決算でも利用できることがあります。
いっぽう、手形割引は約束手形を担保にした融資になります。手形割引では、利用者も審査対象となるため、赤字企業では利用できない可能性が高いです。
なお、手形割引には銀行や信用金庫のほかに、手形割引専門業者もあります。手形割引専門業者に関しては、約束手形を振り出す側の信用力が重視される傾向があるため、利用者が赤字決算でも利用できることがあります。
③貸金業法適用の有無
ファクタリングと手形割引では、貸金業法適用の有無が異なります。貸金業法とは、貸金業者からの借入れなどに関する法律です。過剰な貸付けなどから消費者を守るための法律となっており、上限金利などが定められています。
ファクタリングは、売掛債権の売買契約になるため、貸金業法が適用されません。そのため、手数料の割合が割高ではないかなどを事前に確認することが大切です。
いっぽう、銀行・信用金庫以外の手形割引専門業者を利用した手形割引は、貸金業法が適用されるため、20%の上限金利が定められています。
なお、銀行・信用金庫に関しては銀行法や信用金庫法が適用されるため、同じ手形割引でも貸金業法は適用外となります。
④手数料の違い
ファクタリングと手形割引は、いずれも手数料が発生します。ただし、必要な手数料の目安が異なる点に注意が必要です。
ファクタリングの一般的な手数料相場は、以下の通りです。
- 2社間:8%~18%
- 3社間:2%~9%
いっぽう、手形割引の一般的な手数料(金利)相場は、以下の通りです。
- 銀行・信用金庫:1%~5%前後
- 手形割引業者:2.5%~18%
手数料は利用する事業者(ファクタリング会社や銀行など)によって異なりますが、一般的にファクタリングは3社間、手形割引は銀行・信用金庫の手数料が低い傾向にあります。
そのため、手数料を抑えたいのであれば3社間のファクタリング、または銀行・信用金庫での手形割引を利用するとよいでしょう。
⑤償還請求権の有無
ファクタリングと手形割引は、償還請求権の有無も異なります。償還請求権とは、債務者から金銭債権が支払われない場合に、債権者が金銭債権を遡って請求できる権利のことです。
ファクタリングは売掛債権の売買になるため、原則、償還請求権はなく、ファクタリング会社が売掛先から債権の回収を実施します。いっぽう、手形割引では、償還請求権が生じます。
⑥取引先(売掛先)に知られるリスクの有無
ファクタリングは、2社間であれば取引先(売掛先)にファクタリングの利用を知られませんが、3社間では取引先にファクタリングを利用したことがわかってしまいます。
取引先との関係によっては、「自社(取引先)を信用していない」と勘違いされたり、「資金繰りがうまくいっていないのでは」と不安視されたりするかもしれません。今後の取引に影響を与えることもあるため、注意が必要です。
いっぽう、手形割引は銀行や手形割引業者と利用者との取引です。そのため、取引先に手形割引を実施した事実を知られることはなく、今後の取引にも影響をおよぼしません。
⑦決算書・資金計画への影響
ファクタリングは借入れではなく、売掛債権を売却(譲渡)して本来の売掛金回収の期日よりも早期に資金調達する仕組みです。決算書に反映させる必要がなく、今後の資金計画に与える影響も少ない傾向にあります。
いっぽう、手形割引は決算書に負債として記載する必要があります。また、借入金が増えるため、今後、金融機関から融資を受けにくくなることがある点に注意が必要です。
ファクタリングのメリット・デメリット

ファクタリングと手形割引は、それぞれ特徴が異なるため、メリット・デメリットにも違いがあります。まずは、ファクタリングのメリット・デメリットを紹介するので、確認しておきましょう。
ファクタリングのメリット
ファクタリングの主なメリットは、以下の通りです。
- 資金繰りの改善ができる
- 短時間での現金化が可能
- 自社の信用情報に関係がない
- 手形がなくても利用可能
ファクタリングは、売掛金の入金日前に現金を手にできるため、資金繰りの改善が期待できます。
また、ファクタリング会社によっては、最短即日でお金を受取れる場合もあるため、短期間での現金化が可能です。現金化までの期間に関しては、ファクタリング会社によって異なるので、確認しておくとよいでしょう。
なお、ファクタリングは融資ではなく売買契約となるため、信用情報への影響がない点もメリットです。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングの主なデメリットは、以下の通りです。
- 手数料が割高な業者もある
- 売掛金の範囲外の資金調達はできない
ファクタリングの手数料はファクタリング会社によって異なります。なかには高額な手数料を取る悪質なファクタリング会社も紛れているため、事前に手数料を確認することが大切です。
また、ファクタリングは、個人事業主や企業が保有する売掛金を売却して現金化するサービスであることから、資金調達できる金額は事業者が保有している売掛債権の額面金額以下となります。
必要な資金が売掛債権の額面金額を超えるときは、ファクタリング以外の資金調達方法も検討することが必要です。
手形割引のメリット・デメリット
つぎに、手形割引のメリット・デメリットを解説します。
手形割引のメリット
手形割引の主なメリットは、以下の通りです。
- 早期の資金調達が可能
- 一般的な融資より審査に通過しやすい傾向がある
- 手数料が低い傾向がある
約束手形は、原則手形に記載のある支払期日を迎えなければ現金化できませんが、手形割引を活用すれば支払期日前に現金化が可能です。
また、手形割引は、一般的な融資に比べて審査に通過しやすいとされています。約束手形の振出人は、基本的に大手企業であるケースが多く、審査では利用者のほかに手形振出人の信用情報も確認するためです。
大手企業は信用力が高い傾向があるため、手形割引の利用者が中小企業や個人事業主でも、現金化できる可能性は高いでしょう。
そのほか、手数料(金利)が低いことも手形割引のメリットです。資金調達の方法には事業者用無担保ローンの利用などがありますが、手形割引はほかの方法に比べて基本的に低金利の傾向にあります。
手形割引のデメリット
手形割引の主なデメリットは、以下の通りです。
- 不渡りになると買い戻しが必要
- 手数料(金利)がかかる
- 現金化に時間がかかる可能性がある
手形割引は償還請求権が生じるため、担保とした約束手形が不渡りになると、利用者が手形の買い戻しをすることになります。
手形割引を活用する場合、一般的には資金繰りが厳しいと考えられるため、手形の買い戻しが生じる可能性がある点は大きなデメリットでしょう。
また、手形割引の利用時は手数料がかかるため、約束手形で受取れる本来の金額より低くなるデメリットもあります。頻繁に利用してしまうと、自社の収益に影響を与えてしまうので、よく検討してから利用することをおすすめします。
なお、手数料に関しては、銀行や信用金庫であれば低く抑えることが可能ですが、基本的に手形割引専門業者に比べて現金化に時間がかかってしまう傾向があります。
銀行などで融資取引をはじめる前に事前準備が必要になります。将来的に何らかの融資取引を希望するのであれば早めに相談しておきましょう。
ファクタリング・手形割引はどちらを選ぶべき?
ファクタリングと手形割引にはそれぞれメリットがあり、どちらがより優れているというわけではありません。しかし、いずれも利用できる場面が限られているため、状況に応じて使い分けることが大切です。
ファクタリングと手形割引に適したケースを紹介します。どちらを選ぶか迷ったときは、ぜひ参考にしてください。
ファクタリングが適切なケース
以下のいずれかに当てはまるときは、ファクタリングによる資金調達を検討してみましょう。
- 借入額が多い
- 赤字決算である
- 貸し倒れのリスクを回避したい
- 近い将来、融資を受ける予定がある
自社の借入額が多いときは、金融機関から融資を受けるとさらに借入額が増え、返済による負担が増す可能性があります。また、融資審査では借入額が確認されるため、融資を受けられずに資金調達できない可能性もあるでしょう。
ファクタリングはお金を借りる方法ではなく、売掛債権を譲渡することで資金調達する方法です。借入額が多いときでも利用できる可能性があるだけでなく、返済金額に影響をおよぼさないため、融資と比べると今後の資金繰りに影響を与えにくい傾向にあります。
ファクタリングは自社が赤字決算のときでも利用できることがあります。ただし、売掛先が赤字決算のときは、ファクタリング審査に通過しないケースもあるため注意しましょう。
また、掛取引には売掛先から売掛金を回収できないリスク、いわゆる貸し倒れのリスクがあります。ファクタリングを利用すれば、ファクタリング会社が売掛債権を買取るだけでなく、回収も実施することがあるため、貸し倒れのリスクを回避できるかもしれません。
金融機関から融資を受けると、借入額や返済状況などが信用情報として記録されます。ファクタリングなら信用情報に影響をおよぼさないため、近い将来、融資を受ける予定がある場合でも利用しやすいでしょう。
手形割引が適切なケース
次のいずれかに当てはまるときは、ファクタリングよりも手形割引による資金調達が適しています。
- 手数料を抑えたい
- 売掛先に資金繰りに問題があることを知られたくない
一般的に、ファクタリングよりも手形割引のほうが、手数料は低い傾向にあります。手数料を抑えたいときは、手形割引を利用できないか検討してみましょう。
また、3社間ファクタリングでは、売掛先にファクタリングの利用を知られます。資金繰りに問題があるような印象を与えたり、売掛金回収に不安感を抱いているように誤解させたりするかもしれません。
良好な関係を維持するためにも、手形割引などの別の方法で資金を調達するか、売掛先に知られない2社間ファクタリングを利用する方法も検討してください。
2026年以降は手形割引を利用できない
日本政府や産業界、金融業界では、2026年以降は手形割引に用いる約束手形を廃止する方針で取組んでいます。
約束手形による支払いには、現金を得るまでの期間が長引く、支払期日までに現金化する際の割引料が高いといった特徴があり、受注側企業の資金繰りを悪化させることがあります。
受注側・発注側のどちらかいっぽうにしわ寄せがいく不公平な取引を回避するためにも、インターネットバンキングを利用した振込みなどの別の支払方法へと切り替えていくようにしましょう。
電子記録債権(でんさい)や振込みによる代替も検討しよう
手形割引の代わりに利用できる手段としては、電子記録債権(でんさい)や振込みがあります。ファクタリングや手形割引との違いは以下をご覧ください。
ファクタリング | 手形割引 | 電子記録債権 | 振込み | |
---|---|---|---|---|
目的 | 資金調達 | 資金調達・決済 | 決済 | 決済 |
手数料 | 高め | 高め | 低め | 低め |
取扱い機関 | ファクタリング会社 | 銀行や専門業者 | でんさいネットに登録している金融機関 | 金融機関 |
手形割引は資金調達の方法として利用されますが、本来、約束手形は決済手段のひとつです。手数料が高く、また、現金化までの期間が長い傾向にあるため、電子記録債権や振込みの利用も検討しましょう。
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※ お申込時間や審査の結果によってはご希望に沿えない場合がございます。ファクタリングと手形割引を上手に使い分けよう
ファクタリングと手形割引は、本来金額を受取れる時期を前倒しして、現金の調達が可能になる点は同じです。
ただし、現金化の対象や手数料、償還請求権の有無など違いがあるほか、メリット・デメリットも異なるため、特徴を把握してから利用を検討しましょう。
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- 監修者
- 竹下 昌成(たけした あきなり)
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- プロフィール
- 大家業、TAC講師、竹下FP事務所代表。1971年生まれ。兵庫県西宮市在住。立教大学卒業後、地銀やノンバンク、住宅メーカーFPを経て現職。30歳から大家業をスタート、45歳でFIRE。年間家賃収入3,600万円。得意分野は住宅購入と不動産投資。
- 資格情報
- CFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、住宅ローンアドバイザーほか
- https://mbp-japan.com/hyogo/fp-takeshita/