ファクタリングとでんさい(電子記録債権)の違いやメリット・デメリットを徹底解説

早期の資金調達手段としてファクタリングやでんさい(電子記録債権)割引があります。
ファクタリングとでんさい割引は、どちらも期日前の売掛金や手形を現金化できる点では共通していますが、異なる点もあるため、それぞれの特徴や違いを理解しておくことが大切です。
また、ファクタリングやでんさい割引を利用するメリット・デメリットを知りたい方も多いでしょう。
本記事では、ファクタリングとでんさい割引の違い、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。
ファクタリング・でんさい(電子記録債権)の特徴
ファクタリングとでんさいは、まったく別のサービスであるため、特徴が異なります。まずは、それぞれの特徴を把握しておきましょう。
ファクタリングは売掛債権を売却すること
ファクタリングとは、ファクタリング会社に売掛金(売掛債権)を売却して現金化するサービスです。ファクタリングは債権の売却となるため、法的には債権の売買(債権譲渡)契約になります。
売掛金は、本来指定された期日を迎えなければ現金化できませんが、ファクタリングを利用すれば期日前に現金化が可能です。そのため、資金調達手段のひとつとして、ファクタリングを活用する場合もあります。
なお、ファクタリングにはいくつかの種類がありますが、一般的には買取型ファクタリングをさすことが多いです。また、買取型ファクタリングには、2社間契約と3社間契約があり、以下のような違いがあります。
- 2社間:利用者、ファクタリング会社の契約
- 3社間:利用者、取引先(売掛先)、ファクタリング会社の契約
でんさいは「でんさいネット」が取扱う電子化した売掛債権
でんさいとは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が取扱っている電子記録債権のことです。
2008年に施行された電子記録債権法に基づく新たな金銭債権であり、手形や振込みに代わる新たな決済手段として活用されています。
でんさいを利用するためには、でんさいネットに参加している金融機関へ申込みが必要です。
なお、でんさいは手形と同様の取引だけでなく、手続きをすれば譲渡ができるほか、期日前の現金化(でんさい割引)も可能です。
ファクタリングとでんさい割引の違い
ファクタリングとでんさい割引は、どちらも期日前に現金化できる点では共通していますが、異なる点もあります。以下で、ファクタリングとでんさい割引の主な違いを紹介します。
ネットワークの違い
ファクタリングは、ファクタリング会社を相手方として売掛債権の売買を行います。2社間契約では「利用者、ファクタリング会社」、3社間契約では「利用者、売掛先、ファクタリング会社」での取引となります。
いっぽう、でんさいは、一般社団法人全国銀行協会の100%子会社として設立された株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が取扱っています。そのため、でんさい割引では、でんさいネットに加盟する金融機関が窓口となります。
手数料の違い
ファクタリングとでんさい割引では、手数料(割引率)が異なります。ファクタリングとでんさい割引の手数料の目安は、以下のとおりです。
名称 | ファクタリング | でんさい割引 |
---|---|---|
手数料(割引率) |
2社間:8%~18% 3社間:2%~9% |
1.5%~5.5% |
ファクタリングは、3社間契約より2社間契約のほうが手数料は低くなる傾向があります。
いっぽう、でんさい割引の手数料は、手形割引と同程度となっているケースが多いため、現金化にかかる費用を抑えられる可能性が高いです。
ただし、ファクタリングとでんさい割引は、ともに依頼する場所によって手数料が異なるので、事前に確認することをおすすめします。
債権未回収時の責任の違い
ファクタリングは売掛債権の売買になるため、原則として償還請求権がありません。
そのため、ファクタリング会社が売掛債権を回収できない場合でも、利用者が弁済する義務はなく、ファクタリング会社の責任で売掛先から債権の回収を実施します。
いっぽう、でんさいは、手形割引と同様に原則として償還請求権があるため、金融機関が債権を回収できない場合、利用者にも弁済の責任が生じます。
ファクタリングとでんさい割引を利用する流れ
ファクタリングやでんさい割引を利用するためには、手続きが必要です。以下で、ファクタリングとでんさい割引を利用する流れを紹介します。
ファクタリングの利用方法
ファクタリングを利用する際の大まかな流れは、以下のとおりです。
- 相談
- 申込み
- 必要書類の提出
- 審査
- 契約の締結・振込
ファクタリングは、売掛債権があればすぐに利用可能です。申込方法はファクタリング会社によって異なりますが、WEBや電話、店頭、郵送を選択できるケースが多いです。
申込み後は必要書類の提出があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
でんさい割引の利用方法
でんさい割引を利用する際の大まかな流れは、以下のとおりです。
- 金融機関にてでんさいネットの申込み(でんさいネットを未導入の場合)
- 売掛先が申込先金融機関にて発生記録請求
- 発生記録の通知後、利用者が申込先金融機関にて割引依頼
- 利用者の申込先金融機関が審査
- 振込
前提として、でんさい割引を利用したい場合、相手もでんさいネットを利用できなければいけないため、企業ごとに金融機関への申込みが必要です。
たとえば、売掛先A社は金融機関Aにてでんさいを申込み、利用者B社は金融機関Bにてでんさいを申込むというように、それぞれがでんさいネットの加盟店で口座を開設する必要があります。
でんさいネットが利用できるようになれば、WEBからでんさい割引の申込みが可能です。
なお、でんさい割引の審査は申込先金融機関が実施します。詳細は各金融機関で確認しましょう。
ファクタリングを利用するメリット

ファクタリングには、さまざまなメリットがあります。以下で、ファクタリングを利用する主なメリットを紹介します。
現金化までの時間が短い傾向にある
ファクタリング会社によっては、最短即日の現金化に対応している場合があります。融資などの資金調達は時間がかかるケースも多いですが、ファクタリングであれば比較的短い時間で資金調達できる可能性があります。
特に2社間ファクタリングかつWEBでの申込みは、現金化までの時間が早い傾向にあるので、覚えておきましょう。
売掛先の経営状況がよければ利用できる可能性がある
ファクタリングの審査では、売掛先の経営状況を重視するため、利用者の経営状況がよくない場合でも、売掛先の経営状況がよければ利用できる可能性があります。
また、ファクタリングは、基本的に売掛債権があれば利用できるため、自由度が高いこともメリットでしょう。
共倒れのリスクを回避できる
ファクタリングは、債権未回収の場合に原則として弁済の義務がありません。仮に売掛先の経営悪化や倒産によりファクタリング会社が回収不可能になった場合でも、利用者に影響がないため、共倒れのリスクを回避できます。
ファクタリングを利用するデメリット
ファクタリングにはメリットがあるいっぽうで、デメリットもあります。以下で、ファクタリングを利用する主なデメリットを紹介します。
資金調達できる金額は売掛金の範囲内
ファクタリングは、個人事業主や法人が保有する売掛金を売却して現金化するサービスです。そのため、保有している売掛債権の金額を超える資金調達はできません。
3社間ファクタリングは取引先の承諾が必要
3社間ファクタリングを利用する際は、売掛先の承諾が必要になるため、ファクタリングの事実を売掛先に知られてしまいます。
その結果、売掛先から経営不振を疑われたり、取引を見直されたりすることがあるため、ファクタリング後の取引にマイナスの影響を与える可能性があります。
なかには悪徳な業者も存在する
ファクタリング会社のなかには、違法な会社もあるので注意が必要です。ファクタリングを利用するのであれば、信頼できるファクタリング会社を見極める必要があるでしょう。
でんさい割引を利用するメリット
でんさい割引は、ファクタリングとは異なるメリットがあります。以下で、でんさい割引を利用する主なメリットを紹介します。
利用時の手数料が低い傾向にある
でんさい割引は、ファクタリングに比べて手数料が低い傾向があります。そのため、より多くの資金調達をしたい会社にとっては、ファクタリングよりもでんさい割引のほうが適しているでしょう。
債権の紛失・盗難のリスクがない
ファクタリングは、手続きの際に売掛金の証明として請求書や契約書などの物理的な書類が必要なことがあります。
しかし、でんさい割引は電子債権を現金化するため、手続きに物理的な書類が必要なく、紛失・盗難のリスクがありません。
また、でんさいを利用することで資金調達面だけでなく、ペーパーレス化による管理コストの削減や業務の効率化にも繋がります。
一度の口座開設で利用可能
でんさい割引は、一度口座を開設すれば、登録先の金融機関にオンライン上で申込むだけで利用できます。
ファクタリングのように、その都度ファクタリング会社を探して申込みが必要になるわけではないため、現金化のための負担が比較的少ない傾向にあります。
でんさい割引を利用するデメリット
でんさい割引にもデメリットはあります。以下で、でんさい割引を利用する主なデメリットを紹介します。
取引先もでんさいを利用していなければならない
でんさい割引は、でんさいを利用できることが前提条件です。でんさいは自社だけでなく、取引先も利用していなければシステムを利用できません。
すべての取引先がでんさいに登録していれば問題ありませんが、登録が限られている場合は、でんさい割引を利用できる債権も限られてしまいます。
取引先の不払い時は利用者が支払うリスクを負う
でんさい割引は、原則として償還請求権があるため、取引先が不払いの場合には利用者が弁済しなければなりません。そのため、取引先が倒産した場合、資金繰りが悪化して連鎖倒産するリスクがあります。
審査が厳しい傾向にある
でんさい割引は、銀行の融資と同様に審査が実施されるため、ファクタリングよりも審査が厳しい傾向があります。そのため、自社が赤字経営の場合、でんさい割引を利用できないこともあります。
ファクタリングとでんさい割引はどちらがよい?
ファクタリングとでんさい割引は、どちらも期日前の現金化が可能ですが、資金調達手段としてどちらがよいか迷ってしまう方もいるかもしれません。
ファクタリングとでんさい割引のどちらを利用するかは、自社の状況によって異なります。以下で、それぞれの利用が向いているケースを紹介します。
ファクタリングによる資金調達が向いているケース
ファクタリングの利用が向いている主なケースは、以下のとおりです。
- 早期の資金調達が必要な場合
- 取引先に売掛債権を譲渡した事実を知られたくない場合
- 銀行の融資審査に不安がある場合
2社間ファクタリングの場合、基本的に最短即日の現金化に対応していることが多く、早期の資金調達が可能です。
また、2社間ファクタリングは売掛先に連絡が行かないため、売掛債権を譲渡した事実を売掛先に知られることなく資金調達が可能です。そのため、売掛先との信頼関係を保ちたい場合に適しています。
さらに、ファクタリングの審査では、主に売掛先の経営状況が重視される傾向があるため、自社の経営状況では銀行融資の審査が不安という場合でも、資金調達できる可能性があります。
そのため、赤字決算や債務超過など、経営状況が芳しくない会社にもファクタリングによる資金調達は適しています。
でんさい割引による資金調達が向いているケース
でんさい割引による資金調達が向いている主なケースは、以下のとおりです。
- 資金調達の窓口として信頼できる金融機関を利用したい場合
- 自社の経営状況が良好で、手数料を抑えて資金調達したい場合
- 売掛先がでんさいを利用している場合
でんさい割引を利用する場合、でんさいネットに加盟する金融機関が窓口になります。
銀行、信用金庫、信用組合、商工中金、農協系統金融機関など、一般的に信頼性が高い金融機関が窓口となるため、資金調達先の信頼性を重視する会社に向いています。
また、でんさい割引は、ファクタリングよりも審査が厳しい傾向があるものの、手数料を抑えられる傾向があります。そのため、自社の経営状況が良好で、できるだけ効率的な資金調達を行いたい会社も、でんさい割引のほうが向いているでしょう。
なお、でんさい割引を利用するには、売掛先もでんさいを利用している必要があります。そもそもでんさいを利用している売掛先がない場合、当然ですが、でんさい割引は利用できません。
最短即日の現金化にも対応!ファクタリングのご相談は「AGビジネスサポート」へ
AGビジネスサポートの「売掛債権ファクタリング」は、最短即日の現金化に対応しており、請求書1枚から来店不要で申込みが可能です(※1)(※2)(※3)。
また、売掛債権ファクタリングは、2社間契約と3社間契約を選択可能で、2社間契約であれば取引先への開示も原則として不要です。
赤字経営や債務超過などのお客様も買取検討の対象になるので、資金調達に悩んでいる方は、一度AGビジネスサポートへご相談ください。
(※1)申込時間帯によっては対応できない場合があります。(※2)本審査の結果、ご希望にそえない場合もあります。
(※3)取引形態、買取金額によって条件が異なります。詳しくは営業担当にお問合せください。
ファクタリングとでんさい割引の違いを理解したうえで活用しよう
ファクタリングとでんさい割引は、どちらも債権を現金化できる方法です。ただし、ファクタリングとでんさい割引では、ネットワークや手数料、未回収時の責任などに違いがあるため、理解しておきましょう。
また、ファクタリングとでんさい割引には、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらがよいとは一概にいえないため、特徴を把握したうえで自社にとって最適な手段を選ぶことが大切です。
AGビジネスサポートの「売掛債権ファクタリング」は、最短即日の現金化に対応しており、現在赤字、債務超過の企業でも買取を検討します。
資金調達に悩んでいる方は、一度AGビジネスサポートにご相談ください。
おすすめ記事
-
-
- 監修者
- 竹下 昌成(たけした あきなり)
-
- プロフィール
- 大家業、TAC講師、竹下FP事務所代表。1971年生まれ。兵庫県西宮市在住。立教大学卒業後、地銀やノンバンク、住宅メーカーFPを経て現職。30歳から大家業をスタート、45歳でFIRE。年間家賃収入3,600万円。得意分野は住宅購入と不動産投資。
- 資格情報
- CFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、住宅ローンアドバイザーほか
- https://mbp-japan.com/hyogo/fp-takeshita/